たどり着いた浮遊感(Floating Feeling)
CONCEPT
繁華街の喧騒を抜け、どこか懐かしい街並みに佇む4階建ての小さなビル。
その最上階に、ちょっと変わった賃貸物件が誕生した。
施主は、墨田区・江東区を中心に大家業を営む岡部保全合名会社。
1923年(大正12年)創業の100年企業とその歴史は長い。
築古物件をリノベーションすることで不動産価値を向上させて空室を解消する例は珍しくないが、近年、住人が高齢化するまで数十年と住み続けるケースも多く、そういう物件にこそフルスケルトンがものをいう。生まれ変わった物件も1988年築の36年選手。
「日本の住宅ストックがそういう時期にきているのかな」と同社不動産管理部の寺田さん。
岡部保全合名会社がこだわるのは、ありきたりな改修を煙に巻くようなデザイン。且つ、住み心地も損なわない空間であること。
「端的に言うと、カッコいいが正義。リノベするからにはアンチテーゼみたいな物件でありたいと思っているんです」
今回は「音楽を感じる部屋を作りたい」と、アシッドジャズの金字塔・ジャミロクワイの「Virtual Insanity」にインスパイアされた世界観をもとに着想。
“浮遊感”をキーワードに、3mの天井高とルーフバルコニーの開放感ある全面窓を活かす術を、施主と施工サイドで1年かけて練り上げた。
ダイニングキッチンは床から高さ64cmの位置に設定。
空間に高低差という「仕切りのない仕切り」を設けることで、LDKに奥行きと広がりを感じさせる造りに。段差にはダウンライトを設置し、夜間はダイニングが浮いているかのような演出も。
既存の天窓はあえてデザインを施し、高い目線で外界との繋がりを持たせた。
あえて雑多に見せるところ(ドア塗装やカウンター)と、浮遊感をきれいに見せるため繊細に造作した箇所を混在させることでメリハリを出しつつ、動線と視界にも気を配った。
リノベーションはとかく省エネやSDGsなどの側面で語られがちだが、大家側からすればもっとローカルなことのほうが大事。
「住む人あっての話だから。入居者がハッピーなら、そこから生まれる何かの方がよっぽど地球に優しいでしょう」
聞けば、募集開始から1週間というスピードで入居が決まったそう。
収益物件である以上はあくまでも住むための部屋。住まい手ファーストながら、時代におもねらないリノベで物件価値を覆す攻めの姿勢はこれからも続く。
PLAN
OUTLINE
面積 |
50~69㎡ |
ブランド |
自由設計 |
間取り |
1LDK |
テイスト |
モダン/インダストリアル |
建物 |
マンション |
住居構成 |
その他 |
価格帯 |
1200万円以上 |
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